∴SHRINE∴
∴FANTASY LIVING THING PICTURE BOOK∴

■竜話■
作:nao様
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ある高山の 生命の息吹が見られないほどの高地、

その洞窟奥には光満ち溢れ草が生い茂げる不思議な空間が存在した。

その中央に鎮座する者

彼の者は最強の生物,獣皇,神話において神すら殺す者 竜

「・・・・z・・・・z・・・・z・・・・」

獣皇? 凡そ、丸まり鼾を立てるその姿は二つ名に名前負け。

もし彼が普通の獣と同等のサイズだったなら。しかし、彼は寝ていようと獣皇だった。

その手で人を握り潰せるサイズの竜である彼は。

 

その日、彼が目覚め 咆哮のような欠伸を発し

高山の麓、その地へ飛んでみると人間の町があった。

其処は彼が丹精こめて育て上げた庭、人間で言う処の森があった場所。

その精魂込めて作り上げた庭を人間は潰し(森を切り開き田畑を作り・・・)、

醜く乱した。

・・・キれた(プチッ

取り敢えず、人を駆除し建物を破壊し 其処を更地に戻した処で

疲れたので一眠りするため哀しみに胸を痛めつつ寝床に戻った。

 

・・・本寝してしまった。

慌てて庭に戻ってみると、其処には再び人間の町が

・・・性懲りもせずに、害虫どもがああああああっ!!!

激怒に駆られた彼は再び人を駆除し其処を更地に戻すため襲いかかった。

しかし、人間も無抵抗ではなかった。

厄介な魔導師と強い人間を集め軍隊を組織し抵抗して来た。

可也梃子摺った。しかし、彼の敵ではなかった。

人間の感覚で言えば、蜂の巣を駆除するようなもの。

最初は驚かされたが、攻撃すると分っていれば何も恐れるモノはない。

華麗なフットワークでかわし、竜咆哮をブチ噛まし、あっという間に町は壊滅。

・・・ふっ、イイ汗かいたぜ。

彼は庭を作り直す事をすっかり忘れ、寝床についた。

 

身体をコキコキと鳴らしつつ起きた彼は、目覚めの欠伸を空に上げ、空へ舞った。

三度、其処に町があった。

しかし、彼は激情に駆られ襲いかかることなく一度寝床へ帰還した。

今度こそ完全に人間を駆除するため。 彼だって多少は考えるのだ。

・・・はて、如何したものか。

いい案が思い浮かばず三日三晩(文字通り)思案し、偵察に行ったところ

奇妙な一団が彼の寝床、山の中腹近くへやって来た。

・・・軍隊ではないな。

様子を見てみる事にした。

奇妙な一団は祭壇を作り、其処に娘1人置いて戻って行ってしまった。

・・・何をするつもりだ?

様子を見てみる事にした。

 

肥沃な森林,清水を湛える河 その地は宛も人為的に創られたかのような理想郷

その地に辿り付いた人々は森を切り開き田畑を造り・・・更に人が集まり

豊かで平和な町が出来あがった。

しかし、平和は一瞬で消え去った。

突然現れた竜が人を建物を田畑を焼き払い人々の苦労を一瞬で灰燼に帰した。

まるで、人間は悪 根絶しなければならないと言うかのように。

人々は暴竜に恐怖した。

だが、人間は恐怖しているだけの弱い存在でもなかった。

逞しく再び町を再建し、暴竜に対抗するため軍を組織した。

 

圧倒的だった、怒れる暴竜の力は。

軍の存在などまるで無意味。

前回と同じ光景が再び暴竜によって齎された。

其処までされながらも人々はその地から離れようとしない。

その地の豊かさを知ってしまった今、新天地を求める事など出来ないなら。

人々は思案した。そして一つの結論に達した。

生贄

生娘を竜に差し出す事で、町の平和を約束して頂く。

小を殺し大を活かすという余りにも傲慢な考えを人々は妙案だと思った。

 

そして暴竜襲来の季節、町は一人の娘を生贄に選んだ。

彼女は天蓋孤独、親兄弟もいない。

そんな不幸な境遇にありながらも心優しい娘は神父や町の名士に頼まれアッサリ承諾した。

人々の役に立てる 少しでも人々に自分を知ってもらい己の人生に意義が持てると。

身を清め、生涯始めて着飾り、

神官達に山の中腹に作られた祭壇へ連れられ座し、1人其処に残された。

1人になり娘は

恐怖で、

寂しさで、

泣きそうになった。

 

三日後、娘はまだ其処にいた。

冷たい雨に打たれ凍え今にも死にそうなその様子に彼はちょっと可哀想だと思った。

気を失った娘を両手でそっと抱え持ち、寝床へ連れて帰り、看病・・・

目を覚ました娘は自分を食べる代わりに町を襲わないで下さいと懇願してきた。

・・・失礼な。

確かに彼の知り合いにはその怯える表情がタマラナイと人喰主義の奴がいるが

彼自身の性格はいたって温厚

過去、他に食べる物が無い時に仕方なく食べた事があるだけで本来は菜食。

注)非常にエネルギー効率のイイ果実が存在し、巨体を賄うのに一回の食事で数個食べれば間に合う。

コレを他のモノで代用しようとすると、例えば一日成人十数人食らう事が必要。

長い間生きていれば人の言葉を覚える事(というか、老竜に仕込まされた)もあるので、

それで話かけてみた。

「俺、人、食ベル、シナイ。」

・・・おお、驚ろいとる。つー事はしっかりコレは使えるのか

「じゃあ私は如何すれば・・・」

如何やら、この娘は生贄にされるためにあそこへ残された様だ。

・・・気に食わないな。同族を差し出し、生残ろうとするその性根。

ぐううううぅ

派手に鳴る娘の御腹。赤くなるその顔。 薬と水は飲ませていたが何も食べさせていない。

・・・人が食べるものは確か・・・焼いた肉?

「娘、ココ、待ツ」

 

娘の心を映したかの様に降出した雨は、冷たく無慈悲に娘の体力を奪っていった。

それでも やって来ない。

まるで娘に生贄の価値はないと言っているかのように。

かと言って、逃げるわけには行かない。 否、もう逃げる体力が残っていない。

娘は全ての感覚を失い気を失った。

 

あたたかい

 

感じた事がない抱擁感に彼女はまどろむ。

急速に意識が覚醒し、醒ました目の前に広がる幻想的な世界。

優しい光が溢れる草原。

彼女を抱くは深緑の巨大な暖かく柔らかい陶器な板が寄り集まり大きい塊を形成しているもの。

全てを忘れ茫然とする娘。

不意に上から視線を感じ、その視線を感じるほうに視線を向けると

・・・・・・・・・・・目が合った。

最強の生物,獣皇,神話において神すら殺す者 竜

そして、今まで娘が身体を預けていたのはその柔らかい腹。

純粋な恐怖。それが娘の身体を縛る。

そのまま卒倒してしまいたい。でも言わなければならない。

「お、御願い致します。私は甚振り食べられようと何されようと構いません。

その代わり町を町を襲わないで下さいませ。」

こんな存在に言葉が通じるとは思えない。しかし、何度でも言わずにはいられない。

不意に、その巨体が細かく震え、

「俺、人、食ベル、シナイ。」

へ!!?

喋った。確かにその瞳には高度な知性が感じられる。

コレが過去2回町を壊滅させた張本人? でも、このような存在がそう幾つもいるとは思えない。

身が助かった安堵に腰が抜け、でもそれなら

「じゃあ私は如何すれば・・・」

何もない。結局私は何も出来ない・・・

ぐううううぅ

娘の意思とは関係なく派手にお腹が鳴った。

こんな時にお腹がなるなんて。 羞恥で顔に血が集まるのが分る。

恐怖、畏怖以上に自分の無節操さに娘は動けなくなってしまった。

竜は首を傾げ立ち上がり

「娘、ココ、待ツ」

歩き出す。娘も我に返り、後を追って優光溢れる空間から洞窟に入り、

娘の目の前で洞窟の外に出る竜の姿がフト消えた。

!!?

洞窟出口のところまで来て、その理由がわかった。

吹き込む冷風、眼下には絶壁。そして雲海。

今、人間が辿り付けない高地にいる事を 娘は理解した。

 

彼は一度町近くで咆哮を上げ人間を威し、付近の森で一匹の鹿を捕まえ寝床へ戻った。

その鹿を竜咆哮で丸焼きにし、娘へ差し出してみる。

「コレ、食ベル、大丈夫?」

引いてはいるが意図することは伝わったようで、娘はそれ食べようと・・・・・・半泣きの顔を彼へ

彼の口には一口。しかし娘の口に対しそれは無数口分

・・・なるほど、大きすぎて食べられないのか。

爪でソレを細切れにしてやっと、娘が両手で持ち頂けるサイズ。

娘が肉に被り付き空腹を満たす様を見ていると、まるで庭の世話をしている時の様に

彼の心の中に広がるじんわりとした温かみ

・・・こうゆうのも悪くないなぁ。

そのままボォっと娘を観察していると何時の間にか少女は食事を終え、首を傾げ彼の様子を覗っていた。

肉はほとんど丸ごと残っている。

「ドウシタ?」

聞いてみて気づいた。図体からして娘がこの肉を全て食べられるはずが無い。

肉の塊を一舐めで片付けし

「ゴチソウサマ」

すると呆気にとられた娘も笑みを返し

「御馳走様です、竜様」

竜様・・・如何やら彼の事らしい。

まあ、彼の名を人に教えた処で発音できるはずもないのでそう呼ばせる事にした。

 

娘が来て数日が過ぎた。

高地なので冷えるが、体温が高い彼の懐で過し眠れば寒さとは無縁。

彼自身そう食事は必要としないが、人間はそうはいかない。

かと言って毎食事ごとに獣を捕まえて来たら森が枯渇してしまうので

燻製,畑等々、彼の寝床に充実する人間用食糧事情。 彼の盆栽趣味がこんな処で役立つとは・・・。

「あの・・・すみません、竜様」

「?」

首を傾げ、何用だと聞き返す。そもそも竜の口は人語を話すのに適していない。

娘が竜語を理解出来れば事早いのだが、たった数日で出来るはずもない。

「その・・・私・・・身体が気持悪いので・・・」

「?」

「・・・水浴びがしたいのですが」

・・・ああっ、なるほど。 厄介なものだ、人間というのは。

元々大して身体は汚れず音速で飛べば綺麗になってしまう彼には無縁の悩み。

とは言え、彼だって水浴びしたい時はある。

手で器を作り、娘の前に出す彼。 今度は娘が疑問符。

「乗レ。湖、行ク。」

掴んで運んでもよかった。しかし人間の身体,特に娘の身体は柔でソレだけで壊れそう。

娘を手の中に座らせ、彼は大空へと羽ばたいた。

 

人が空を飛ぶ機会など皆無。

初めは驚いた娘もすぐに慣れ、空の旅を喜んでいた。

「・・・・・・・・」

風の音が強過ぎて娘が何を言っているか聞こえない。叫んでも聞こえない。

「スグ、着ク。着地、衝撃、強イ、注意。」

彼の声は聞こえたらしい。

娘は彼の指にしっかり細腕を回し、彼は後脚だけで軟着陸に成功した。

 

湖の浅い所で身体を洗い、泳ぐ娘。 それを、湖の深い所でじっと動かず顔上部のみ出し覗く彼。

・・・ヤバイな。

娘の様子を見ていると、こうムラムラと彼の獣性が疼いてくる。

それを抑えるため、湖水で身体を冷却していたのだが・・・余計強まってきた気が。

そもそも彼は若い。人間年齢に換算し20代後半になったころだろう。

「竜様、どうかいたしましたか?」

娘の声を聞いただけで獣性がより強く鼓動する。

・・・人間に欲情? 変態だな俺は。

つまり、そうゆう事。例えるなら人が猫に欲情するようなもの。

「俺、娘、犯ス。今、近ヅク、シナイ。」

言葉を選んだつもりがストレートだったらしい。

言った意味を理解したとたん娘は腕で身体を隠ししゃがみ込んでしまった。

つまり双方、娘が雌で彼が雄ということを認識した。

・・・や、やばい。

慌て、後に下がる彼。それを見て、少し冷静になる娘。

竜様と畏怖してきたが、彼は生物なのだ。 好きも嫌いも・・・恐れもある。

彼が何に対して恐れているかは分らないが、娘を大事に思っているのは確実。

人が人をそう思うように。

そう思った途端、娘は彼に対して愛情を自覚した。

「私が・・・竜様を御鎮め致します。」

元々彼女はそのために彼の処に来たのだから。 しかし、彼はそうはいかない。

竜には人に欲情する輩(変態,ロリコン?)がいるが、彼は普通(ノーマル)のつもりだった。

それ以上にヤれば娘はコワれる。折角見付けた楽しみをこんな処で失いたくない。

いや、彼は娘を愛してしまった事を認めたくないだけなのかもしれない。そのいい訳。

彼の心の葛藤に反し、元気になり頭を出す彼の逸物。

「す、凄く大きい・・・(ポッ)」

・・・お、終った。俺の竜生(泣)。

彼は全てを観念し、浅瀬に座り込んだ。

脚半分が水に浸かり、天を突く娘の太腿とほぼ同じ太さ,娘の脚より少し短い程度の竜根

彼とその竜根の間に身体を割り込ませ、抱き付く娘。

乳房の間に幹を挟み尖った亀頭(?)に頬を擦り付け、肢体全てを使い扱く。

「熱い・・・・。いかがでしょうか、竜様」

冷たく柔らかい娘の身体。その上、娘の息も荒く高揚した頬が色っぽい。

これが悪いはずがない。

・・・だ、出したい。

汗で濡れた白い身体が目の前でその汗を潤滑油代わりに上下に動き、

・・・うっ!!!

「きゃっ!!?」

丁度娘が両手で鈴口を抑えた時に吹き出した精液は、その手の誘導で娘の方へ。

バケツいっぱいの精液を浴び、茫然の娘は全身精液塗れになってしまった。

しかし、彼の獣欲は納まるところかよりいっそう・・・

・・・ハア、ハア、ハア

只ならぬ気配に恐る恐る振り向いた娘は

彼が

竜,獣皇であることを

彼自身が恐れるモノを

理解した。

彼は娘の身体を摘み巨大な竜根先端へいれると裂ける小さい秘裂を押し付けた。

ミシッ!!

「んっ・・・痛イッ」

圧力に半蟹股の娘の股間が軋み、悲鳴が漏れる。それでも勢いは止まらない。

「あうっ、あうっ、フグッ、ギッ」

娘は苦痛の余り何も喋れず悲鳴しか零れない。

そして時間を掛けて、娘の腹腔は彼の逸物で満たされた。

「はっ・・・はっ・・・はっ・・・」

娘の其処は今にもはちきれそうなくらいキチキチに伸びきり、身体いっぱいモノを頬頬張り

苦痛と横隔膜を押し上げられ内臓を掻き乱される圧迫物に娘の息は絶え絶え。

涙が止めど無く流れるその眼も何処か虚ろ。

ずずずずず・・・

「あぐぐぐぐ」

血が飛沫、娘から引き出された幹が赤く染まる。

 

繰り返される単調な上下運動・・・・・

娘から流れ出た鮮血は既に彼の前液、か、娘の愛液に洗い流され

もう娘の顔には切ない表情が

「気持、いい、ですか? 竜様」

処女だった娘は苦痛とそれを上回る快感を我慢し、彼を気使う余裕を見せていた。

対し彼は黙々と娘の身体を使って快感を貪る。

それでも娘の身体を潰さない気遣っているのは彼の理性。

・・・出したい。でも、

本気射精に娘,人間の雌の身体が耐えられるか微妙。

「私の、事は、御気に、なさらず」

「!!!」

彼の悩みは既に娘へ御見通しらしい。恋は女を強くする。

・・・・・・(感動)

どぶっ

「ひくぁっ!!?」

余りモノ不意打ち。

胎内の爆発に娘の身体が仰け反り、その御腹はゴロゴロと鳴りながらプクと膨らむ。

そして、

ブシュ―――っ

「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ・・・・・・」

彼と娘の結合部から娘の胎内に収まりきれない精液が

射精の勢いそのままに、永く、噴出し続けた・・・。

 

まれに、竜精で身体を変貌(と言うよりかより強く?)するモノがいる。

つまり娘がそれだった。

寝床への帰還への大空

「身体、大丈夫?」

「はいっ、でも・・・まだ竜様が身体の中にいらっしゃるみたいです(照」

彼の頭の上、角の間から戻ってくる返事

娘は今頭の上にいる。そうでなければ娘の声が聞こえないから。

様子からして娘の身体のダメージは人間の男にされたソレ程度で済んだよう。

寝床へ帰って直、彼は毎日娘が身体を綺麗に出来るように寝床に風呂を造った。

彼の寝床に人間の生活設備が充実した事はいうまでもあるまい。

 

人間の時の流れと竜のソレは遥かに違う。

あっという間に、人間の赤子が成人し次の世代を育てる月日が流れた。

しかし、娘は彼とであった当時からほんの少し成長した程度。

なぜなら、毎日の様に竜精 特にそれが濃厚な精液を受けた娘の身体は既に、

外見は変らずとも細胞単位で竜に近くなっていたから。

そしてその年月は当時に

娘に、彼が竜と人間に時の流れの違いこそあれ感情に大差ない事,竜語を学ばせ、

彼が何故数度と町を壊滅させたかを理解させた。

もう彼に町を壊滅させ人を殺す気はない。

「あっ!!!」

『如何した行き成り』

「竜様は20年周期で町へ来られていましたね」

結果的にそうなったに過ぎない。

『我々が出会ってから大体そんなものだな。』

「如何しましょう。もう竜様が町を襲う事なんてないのに」

『だな。・・・娘、初めて出会った場所へ連れて行く。その事を人々へ伝えてくれるか』

新月の夜、闇に紛れ二人は祭壇へ降り立った。

『三日後ここへ迎えに来る。それまで・・・暫しの別れだ』

「はい竜様、行って参ります。」

嬉々として町へ向う娘を見送りつつ彼は思う。やはり人は人と共に生きるべきだと。

 

20年経っても町の様子は全然変っていなかった。

町は穏やかに繁盛している。それでも行き交う人々の表情に影があるのは・・・

娘は教会へ赴き、神父へ事の顛末を話した。

もう竜様は町を襲う事はない。生贄を差し出す必要はない と。

神父は表向き納得してみせたが、実は全く信じていなかった。

20年前に生贄となった娘が生残り歳も取らずに若々しい事など有り得ない。

ましてや、20年前生贄で鎮竜に成功して以来この神父の町からの信頼は厚く

多くの金品が貢がれてきた。

自分の娘を生贄に選ばないようにと。

だから娘の言う事が例え本当であろうと今更生贄が必要ないなどと口外されては困る。

そして神父は娘が恐ろしかった。

娘は神秘的な気配を漂わせ、己の悪事を見透かしている様で。

神父は娘に出した飲み物にこっそり睡眠薬を入れた。

しかし

「・・・どうかしましたか?」

いつまで経っても効かない。

見た目はともかくとして半ば竜と化している娘に人の睡眠薬など効くはずがない。

神父は実力行使へ出た

ガスッ

「きゃっ!!? い、行き成り何を」

「お黙りなさい、悪魔め。町を滅ぼすつもりだったのでしょうが、

私は騙されませんよ。大人しく退散しなさい。」

ガスッ、ドスッ、ベキッ

暴行は無抵抗な娘が気を失うまで続けられた・・・

 

迎えに行くつもりはなかった。しかし二日目の夜、胸騒ぎに襲われた彼は結局祭壇へ。

其処には傷つき柱に縛られた娘。

彼は娘の見に何が起こったかを理解した。

町に彼女を覚えている人間がいるはずもなく、彼女は異端として扱われた。

そして幸いとばかりに娘を再び生贄に。

『害虫どもがああああああああっ!!!』

恐らく、町まで響く竜の咆哮。

「竜様・・・御止めください・・・私は・・・大丈夫」

「!!!」

怒叫に一時的に意識を取り戻した娘の声に冷静になる彼。

ここまでされて、なお、娘は町を気遣う。なんと健気。

しかし伴侶を傷つけられ大人しく出来る程彼は優しくない。

娘を両手で大事に抱え持ち、そのまま町へ飛翔。

町中央にある広場へ彼は降り立った。

「聞ケ、卑小ナ、人間ドモ。貴様達ハ、幾度ト無ク、我ノ忠告ヲ、無視シ、

我ノ大事ナモノ、傷ツケタ。我ハ、貴様達ヲ、滅スル」

慌ててやってくる何か偉そうな一団。連中から娘についた匂いと同じ匂いがする。

「り、竜様、生贄が御気に召して頂けないのなら、さらに生贄の御用意を」

こいつ等に「竜様」と言われると虫唾が走る。それ以前にこいつ等は話を全く聞いていない。

ぷちっ

連中を踏み潰し、更に話を続ける。

「シカシ、娘ハ、貴様達滅スルヲ、望マナイ。ダカラ、俺ハ、貴様達滅ッシナイ

二度ト、同族ヲ、差シ出ソウト思ウナ。」

もう後はしったことではない。彼は娘を連れて寝床へ帰った。

 

ある町に一つの御伽話がある。

幾度となく暴竜に襲われた町は生贄として一人の娘を差し出した。

しかし娘は暴竜に喰われることなく竜を鎮め、その竜の花嫁となった。

そして、町に平和が訪れたという。

その町に娘は帰ってきた。何故なら・・・

 

『もう直、俺は休眠期に入る。今度のは多分可也永くなる。』

「それは一体・・・」

『さあな。多分軽く百年程。』

「ならば私も御一緒に」

竜に近づきながらも人と変らない生活を続けていた娘に休眠期はない。

百年間寝つづける事など不可能。十年でも持たないだろう。

『無理だ。でも俺は次起きた時また君と一緒に生活したい。そのために町に帰ってくれ。』

「・・・・・・は・・・い。」

娘は彼の頭の上に乗り、二人はかつて祭壇があった場所へ。

『俺が起きたら・・・また会おう。』

「はい。・・・でも、竜様が起きられても私にはそれを知る術がありません。」

『大丈夫。俺の欠伸は大きいからな、町まで響くさ。』

娘は何度も何度も降り返りながら町へ帰って行った。

 

そして百年後、彼は目覚め、祭壇があった場所へやってきた。

しかし、其処に娘の姿はない。

だが其処へ向ってくるマント姿の人影が見えた。

「本当に・・・竜様が来た。」

その声はあの娘ではなかった。でも、あの娘に近い匂いがする。

彼が口を開くその前に

「竜語で話されて下さい。私、竜語も使えますから。」

『娘は如何した。貴様は何者だ? 何故あの娘と同じ匂いがする?』

「当然です。」

そう言ってマントから覗かせた姿は人間でなかった。竜でもなかった。

若い娘の容姿に、背に竜翼,米神に角を生やし目は竜眼。

可也人に近い竜人。竜と人間の混血。 その顔はあの 娘そっくり。

彼女の話は彼を驚嘆させるに十分だった。

娘は彼の目覚めを待ちきれなかった。待ち切れず十数年に逝ってしまった。

二人の愛の結晶を残し。 それがその彼女の母。彼女の母が結婚し生れた彼女。

しかし彼女の母は普通の人間だった。 彼女の母は娘が逝く前に往生している。

彼はその話しに泣いた。

その咆哮は余りにも悲しく、町の人々を切なくさせたという。

娘を愛してしまった今、もう彼は1人で生活する事など出来ない。

彼は彼女と共に町へ・・・

 

これは何故、その町に竜が共に暮らしているかという御話。



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■竜話■

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